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(一) また一人

むかしむかし、富士山の山頂に桃が何よりも好きなおじいさんと、桃を盗むのが何よりも楽しみにしているおばあさんが住んでいました。二人はとてもむつましく、楽しい毎日を過ごしていました。ある時、



おばあさん:じいさんや、早く出ておいで、びっくりする話があるぞ。今日こんな大きな桃を授かったぞ。きっと神様がわしが毎日苦労して桃を盗むのを見て、授けてくださったのじゃろう。

おじいさん:おーっ。大きな桃じゃこと。ばあさんや、よくやった。

おばあさん:さあ、早く包丁を持って来ておくれ。早く中身がみたくて我慢できないわ。

おじいさん:さあ、いくぞ。しっかれ持っていてくれよ。1,2の3!

二人:あーっ。なんじゃこりゃ?

桃太郎:じゃじゃじゃじゃーん!

二人:お前は誰じゃ?

桃太郎:おらは桃太郎と言うんだ。神様がおまえたちに授けた子供だ。初めまして、よろしくな。

二人:こちらこそ。ところで、お前はどうしてここにいるんじゃ?

桃太郎:あーあ、腹へった。何か食べるものはないのか?

二人:(顔を見合わせながら)えー!



【語り:桃太郎は本当に神様から授かったものなのでしょうか?それはともかく、おじいさんとおばあさんの悪夢がこれから始まろうとは誰が想像できたでしょうか?】



(二) 利を以てこれを誘う

桃太郎が現れてからというもの、おじいさんとおばあさんの暮らしはさらに苦しさが増しました。ただでさえ貧しいというのに、一人増えたことにより、生活費がさらにかさむからです。それに桃太郎はどうしようもないほどの怠け者でした。そこでおじいさんとおばあさんはこの悪夢から逃れようと悩んだ末、一計を思いつきました。



桃太郎:おとう、おっかあ、お帰りなさい。

二人:うん。

桃太郎:どうしただ。何があったんだ?

おじいさん:桃太郎や。話によるとな、となりまちのお姫様が鬼にさらわれてしまったそうじゃ。城主もえらくあわてておって、お姫様を無事助けたらその者に姫を嫁がせてもいいと言っておるのじゃ。

おばあさん:それに全財産もその者に譲るとも言っておるのじゃ。お前も知ってるように、うちの暮らしも昔ほどではなくなったし……。

桃太郎:そういうことは、おらにもお姫様を助けるだけの力があると言うのだな?

二人:そうじゃ。

おじいさん:桃太郎や、見てごらん。お前はもうこんなに大きくなった。

おばあさん:からだもこんなにたくましくなった。おとうもおっかあも、お前ならこの任務を無事は果たせると思っているんじゃ。

おじいさん:きれいなお姫様が待っているぞ。

おばあさん:山のような宝物もお前を呼んでるぞ。

桃太郎:わかった。おら、やってみる!

おじいさん:よく言った!ところで、これはこの家の先祖代々の包丁だ。おとうとおっかあが一番気にいっている桃を切る道具じゃ。

おばあさん:これは、お前が途中で腹を空かさないようにと、おっかあが作った特製のジャンボきびだんごだ。

桃太郎:よし、言ってくるよ。

二人:(涙を浮かべるふりをして)気をつけて行ってくるんだぞ。



【語り:こうして二人は桃太郎を追い出すことに成功しました。でも、桃太郎の行方はどうなるのでしょうか?続きを見てみましょう。】



(三) 食を以って悪を治める

すっかりうまくだまされた桃太郎だが、持ち前の呑気さは相変わらずです。今日も元気に鼻歌を口ずさみながら、鬼が島にいるお姫様を助けに行く途中です。そこへ、突然どこからか三匹の動物が現れました。



桃太郎:もーもたろさん、ももたろうさん…。

野良犬:やい!おれは野良犬だ。ワン、ワン!

乞食猿:わしは乞食猿だ。キキー!

キ ジ:わいはキジだ。

三 匹:わしらは、強盗暴走三動物だ!

野良犬:命がほしかったら、金目の物をおいてきな。

桃太郎:なかなかかわいい動物じゃないか。お前たち腹が減っただらう。いっしょにきびだんごでも食わないか?

乞食猿:うるせえ、さっさ出すんだ!

(桃太郎はひとつずつ、きびだんごを動物の手の中に入れながら)

桃太郎:まあ、そう遠慮せんと、早く食えよ。

(暴走三動物は互いの目を見ながら)

乞食猿:まあ、いいか。ちょうど腹も減ったことだし、腹が膨れてからいただくことにするか。

キ ジ:それもそうだな。わいも腹がグーグーなりっぱなしだぜ。

野良犬:どうぜ今日は初仕事だ。すこしまけてやってもいいか。

(暴走三動物は大口を開け、ぱくぱくと食べ始め出した)

桃太郎:おらは今、お姫様を助けに鬼が島へ行く途中なんだ。お姫様は財産を山のようにあるそうだが、一緒に行かないか。

キ ジ:山のような財産だって?

野良犬:それなら一生食うに困らないな。

乞食猿:じゃ、一緒に行ってやろうか。

桃太郎:よかった!お前たちはお姫様が好きか?

三 匹:もちろんだぜ。

桃太郎:じゃあ、宝物は?

三 匹:欲しい。

桃太郎:じゃあ、出発だあ!

三 匹:おーっ!



【語り:暴走三動物は何も知らずに桃太郎にはめられたが、このあと、果たして吉と出るか凶と出るか?さあ、またまた続きを見てみましょう。】



(四) 任務達成

みんなが大きな声で歌を歌いながら歩いていると、やがて目の前に鬼が島が見えてきました。



野良犬:鬼が島が見えるぞ。

乞食猿:そういうふうに見えないがなあ。

キ ジ:親分、中に入るんですかい?

桃太郎:うん、中に入って様子を見てみよう。

(突然、大きな門が開いて、中から一人の男が出て来て)

鬼 :OH! Who are you ?

(暴走三動物はびっくりして)

三 匹:何だって?

桃太郎:Hello! ’m 桃太郎. Can you speak Japanese?

 鬼 :YA! I can speak a little Japanese.

桃太郎:お姫様は どこだ?

 鬼 :ちょうどよっかた。「家へ帰りたい」と言ってうるさいんですよ。

三 匹:一体全体どうなってるんだ?

 鬼 :実は、しかじか、こうこう……。

野良犬:なんだ。お姫様は迷子になってただけなんだ。

キ ジ:それをお前に助けてもらった。

乞食猿:自分の家までの道しか覚えていないなんて。まったくお前も方向音痴だよな。

 鬼 :だから、仕方ないからお姫様をここに留めておいたんですよ。

桃太郎:ところで、何でお前はここにいるんだ。

 鬼 :私はイギリスの船員です。一昨年船にのっているときに遭難して、ここへ流れ着いたんです。でも、ここの生活がなかなか気に入ってしまって、それでここにずって暮らしているんです。

三 匹:なるほど!

りんご姫:鬼、What are you doing?

 鬼 :OH!お姫様、この人たちがお城へ連れて帰ってくれるそうですよ。

りんご姫:え、ほんとう?あなたがたが私を連れて帰ってくれるって。あなたの名前は?

桃太郎:桃太郎と言います。

(りんご姫は桃太郎に抱きつく)

りんご姫:OH ! I love you.

桃太郎:お姫様、ここでは人が見ていますから、家へ帰ってからにしましょう。

りんご姫:わかりましたわ。

桃太郎:さあ、みんな帰るぞ!

りんご姫:鬼さん、いろいろお世話になりまして、おりがとう。お元気で。

野良犬:ちゃんと帰り道を覚えておくんだぞ。

乞食猿:日本語もしっかり勉強した方がいいよ。ガンバレよー。

キ ジ:また、会える日を楽しみにしてるよ。

みんな:バイ!バイ!



(五) めでたし、めだたし

それから、桃太郎とりんご姫、そして暴走三動物は、富士山の頂上にお城を建て、幸せな毎日を過ごしたそうです。めだたし、めだたし。

~おしまい~



出演:桃太郎、野良犬、乞食猿、キジ、鬼、りんご姫、おじいさん、おばあさん。
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